2026.10.02

日銀が利下げしても、変動金利が下がるとは限らない理由 —「定価」と「割引」の仕組み

「変動金利で借りておけば、いつか日銀が利下げしたときに、返済も楽になる」

名前が「変動」ですから、そう考えるのは自然なことです。 ただ、変動金利の中身を分けて見ると、利下げがあっても、すでに借りている人の金利は下がらないことがあります。

この記事では、その理由を「定価」と「割引」という2つの言葉でご説明します。

1. 変動金利は「定価 − 割引」で決まります

住宅ローンの変動金利は、次の引き算で決まります。

適用金利(実際に払う金利)= 基準金利(定価)− 優遇幅(割引)

用語言い換えると誰が、いつ決めるか例
基準金利定価銀行が決める。借りている人全員に共通3.0%
優遇幅割引契約のときに決まる。原則、完済まで変わらない▲2.0%
適用金利実際に払う金利上の引き算の結果1.0%

※ 数字は仕組みを説明するための例です。

基準金利は、多くの銀行が「短期プライムレート」(銀行が信用力の高い企業に、1年以内の期間でお金を貸すときの金利)をもとに決めています。日銀の政策金利の影響は受けますが、いつ、どれだけ動かすかを決めるのは銀行です。

大事なのは、割引は契約のときに決まっているという点です。借りたあとに適用金利が動くのは、定価である基準金利が動いたときだけです。

2. 利下げのあと、銀行は「新規の割引」を広げることがあります

日銀が利下げをしても、銀行が基準金利を下げなければ、借りている人の金利は変わりません。

一方で銀行は、新しいお客様に選んでもらうために、これから借りる人の優遇幅を広げることがあります。そうなると、次のような差が生まれます。

基準金利優遇幅適用金利
あなた(契約時)3.0%▲2.0%1.0%
利下げ後に、新しく借りる人3.0%▲2.3%0.7%
利下げ後の、あなた3.0%▲2.0%1.0%

定価は同じ3.0%。変わったのは、新しく借りる人の割引だけです。

借入額3,000万円・35年返済(元利均等・ボーナス払いなし)で計算すると、金利1.0%なら毎月84,686円、0.7%なら80,556円。差は毎月およそ4,100円、1年でおよそ5万円です。

3. 実際にあったこと — 2016年から2024年

これは仮の話ではありません。

日本銀行の統計によると、短期プライムレート(最も多くの銀行が採用した水準)は、2009年1月から2024年8月まで、15年以上にわたって1.475%のままでした。この間の2016年に、日銀はマイナス金利政策を導入しています。それでも短期プライムレートは動かず、大手銀行の基準金利は2.475%のままでした。

その一方で、新しく借りる人の金利は下がり続けました。

時期対象基準金利優遇幅適用金利
2016年1月新規で借りた人2.475%▲1.85%0.625%
2024年1月新規で借りる人2.475%▲2.13%0.345%
2024年1月2016年に借りた人2.475%▲1.85%のまま0.625%

※ 大手銀行の代表的な変動金利の例。2016年の優遇幅は、基準金利と適用金利の差から計算しています。

定価は8年間同じ。新規の割引だけが広がり、同じ時期でも、借りた年によって0.28%の差がつきました。

4. 「必ず下がらない」わけではありません

公平のために書いておくと、利下げで金利が下がったこともあります。

2008年の秋から冬にかけて日銀が利下げをしたとき、短期プライムレートは1.875%から1.675%(2008年11月)、さらに1.475%(2009年1月)へ下がりました。このときは基準金利も下がり、すでに借りている方の金利も下がっています。

つまり、基準金利を下げるかどうかは銀行の判断しだいです。「下がる」とも「下がらない」とも決まっていない。これが正確なところです。

5. 上がるときは、いっしょに上がります

割引が固定されているということは、定価が上がれば、そのぶん払う金利も上がるということです。

2024年以降、日銀は利上げを続けており、2026年9月には政策金利を1.25%へ引き上げました。短期プライムレートも1.475%から2.375%(2026年8月)まで上がっています。ある大手銀行が公表している例(優遇幅▲2.13%)では、次のとおりです。

時期基準金利適用金利
2024年1月2.475%0.345%
2025年4月2.875%0.745%
2026年9月3.375%1.245%

※ 実際に金利や返済額へ反映される時期は、契約内容によって異なります。

6. 借りる前に、確かめておきたい3つのこと

① 「利下げで返済が楽になる」を、計画の前提にしない いまの金利で返せるか。さらに上がっても返せるか。その2つで借入額を決めておくと、利下げがなくても困りません。

② 金利だけでなく、「優遇幅」を確かめる 見るべきは、いまの適用金利だけではありません。優遇幅が完済まで続くのか、途中で変わる条件がないかを、契約の前に確認しておきたいところです。

③ あとから下げる手段は、借り換え ほかの銀行に借り換えれば、そのときの新規の優遇幅で借り直せます。ただし事務手数料や登記費用などの諸費用がかかるため、金利の差と残りの返済期間を比べて判断します。いまの銀行に金利の見直しを相談する方法もありますが、応じてもらえるとは限りません。

そして、いちばん大切なのは借入額です。金利はあとから選び直せても、借りた金額は変わりません。

まとめ

変動金利は「基準金利(定価)− 優遇幅(割引)」で決まり、割引は契約のときに固定されます。日銀が利下げをしても、銀行が定価を動かさなければ、借りている金利は下がりません。

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※ 本記事は仕組みの説明を目的としたもので、特定の金融機関・商品をおすすめするものではありません。金利や条件は金融機関・審査内容によって異なります。数字は2026年10月2日時点で確認できた公表情報にもとづいています。

出典


📌 キーワード: 変動金利 / 利下げ / 基準金利 / 優遇幅 / 住宅ローン 借り換え

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